@article{oai:ynu.repo.nii.ac.jp:02000049, author = {山岸, 正明 and Yamagishi, Masaaki}, issue = {1}, journal = {横浜国際社会科学研究}, month = {Aug}, note = {本稿の目的は, 主要な専門職研究のレビューを通じて, 先行研究で必ずしも着目されてこなかった論点を整理し, 今後取り組むべき研究課題とその方向性を明らかにすることである. 専門職の定義やその特性, あるいは特定の職業が専門職として制度化されるプロセスについては様々な議論が展開されてきた. これらの研究は, 主に社会学の分野で展開されてきたが, 1990年代以降においては, 組織理論に関わる経営学研究としても発展をみてきた. また, 近年は, 専門職化のプロセスを扱う経営学研究も登場している. しかし, 両分野に横断して展開されてきたが故に, 専門職化のプロセスに関しては, どのような研究課題が残され, どのようなアプローチから研究を進めることが求められるのかについては, 必ずしも整理が進んでいない. そこで本研究では, 専門職化に関わる先行研究を社会学と経営学の両分野について整理しながら, これまでの議論が抱える課題や今後の方向性について検討した. 本稿の議論は, 次のような構成で進められた. まず, 専門職化に関わる社会学研究および経営学研究のレビューを通じて, この領域が何を論じてきたのかを整理した. ここで明らかにされたのは二つの研究課題である. 一つは, 社会学に軸足を置く先行研究では, 新しい職業が成立する初期段階から社会に普及するまでの包括的なプロセスとして十分に検討されていないことである. もう一つは, 経営学における議論は専門職と組織との関係についての議論が支配的であり, プロセスという観点では一部の例外を除いてほとんど蓄積がないことである. 他方で, 専門職を直接的に扱った研究以外に目を向けると, 経営学研究には, 一連の現象をプロセスとして捉えようとした際に, そのメカニズムの解明に寄与しうる理論的枠組みが豊富に蓄積されている. そうした知見との接合を図ることが, 今後の方向性として考えられた. そこで, 本稿では, 新しい専門職の普及をイノベーションの実現プロセスとして捉えることにより, 経営学研究として蓄積した知見を活かしながら, 専門職化の初期段階を含む包括的なプロセスに着目することを提案した. なぜなら, イノベーションが「社会に価値をもたらす革新」であるという定義に基づけば, 専門職化の実現プロセスもまた一つのイノベーションとして理解できるからである. ここでは, 特にイノベーション・システムの概念と制度変化に関する諸研究に注目した. 当該研究領域では, これらの知見を組み合わせることが複雑な現象を読み解く上で鍵になることが先行研究において示されており, 専門職化のプロセスを理解する際にも役立つことが示唆されたためである. この可能性を検討するため, 本稿では日本における臨床心理士の専門職化の事例を詳細にみた先行研究を取り上げ, 上記の二つの概念に基づく検討を行った. 具体的には, Hekkert(2007)によるイノベーション・システムの分析枠組みを参考に事例の整理を試みた. そこで明らかにされたのは, 専門職化のプロセスを詳細に議論した研究であっても, イノベーション研究の知見に基づけば「知識の普及」や「資源動員」の観点で検討の余地が残されていることであった. さらに, それらの側面をより詳しく理解するためには, 制度的企業家や制度的実践の視点から検討することが有用であることを議論した. このように, 新しい分析視角からプロセスをみることにより, これまで見落としてきた論点を洗い出し, より詳細な専門職化のメカニズムを明らかできる可能性があることを確認した. 最後に, ここでの議論を整理し, 本稿における貢献や限界についてまとめると共に, 新たな事例研究の必要性を指摘することで結びとした.}, pages = {91--103}, title = {専門職化に関する新たな分析視角 ―制度変化とイノベーション・システム―}, volume = {28}, year = {2023}, yomi = {ヤマギシ, マサアキ} }